11/09/17
長崎市内にある大学に通っていたんだけど、大学4年の夏にサークルの飲み会で二次会のカラオケを終えて歩いて帰っていた。

路面電車は深夜になると本数が減るし、途中までとかになるし、タクシーはつかまらないから歩くしかなかった。

夜の平和公園は心霊スポットって言われてて正直、横を通りたくなかったんだけど、通らないと帰れないから仕方なかった。

で、横を歩いていると公園の方から人の気配がして、もしやカップル!?と思ってそっちを見たら人の形した真っ黒い影みたいなのがいた。何でか目だけは生々しくて目が合ってしまった。



怖くなってすぐ目をそらして、歩くスピード上げたんだけど、後ろからヒタヒタ足音がして、付いて来てることがわかって鳥肌が立った。

だから、携帯を取り出してメールするフリをしたり、お気に入りのサイトを見るフリをしてたら、運悪く赤信号で止まった。

深夜だけど、ぽつぽつ車は通ってるから信号無視は出来なくて、止まってたら追いつかれて横に並んだ。それは私の顔を覗き込んでくる。

焦げ臭い。臭いが気持ち悪くて吐きそうになりながら、必死に見えてないフリしていた。目が合ったから、私が見えてるって確認しようとしたんだと思う。

青になって前からタクシーが走ってきたんだけど、拾おうとしたら賃送が回送に変わって無視された。

反対側の歩道に渡っても付いて来るし、家まで来られたらどうしようと思ってたら、後ろからタクシーが来て、私の数メートル前で止まってドアを開けてくれた。

黒いのよりもヤラシイおっさんの方がマシだと思って迷わず乗り込んだ。乗り込んだと同時にドアが閉まってタクシーが走り出した。運ちゃんとバックミラー越しに目が合った。

「アンタ、見えてたんだろ?」

って言われてまた鳥肌が立った。たぶん、顔が引きつってたんだと思う。

「いや、俺もさっきアンタに付きまとう黒いの見たから思わず回送にしてしまった」

と言い出した。

つまり、運ちゃんも黒いのが見えて怖くなって私を見捨てたらしい。でも、かわいそうだし、私が反対の歩道に渡ったのを見てUターンして戻って来てくれたとの事。

「ああいうのが一番たちが悪いから見えないふりをしてて正解だった」

と言われた。

黒いのの正体はやっぱり、原爆で亡くなられた方で、運ちゃんが言うには一年中いるけど夏になると数が増えたり大人しかったのがさっきみたいに人についてきたりするようになるらしい。

夏なのはやっぱり※8月9日の事かなと思った。
※https://ja.wikipedia.org/wiki/長崎市への原子爆弾投下

で、どうも私はその黒いのの臭いを嗅いだ事で肺と、もともと弱かった気管を悪くして喘息が出るようになって大学を中退せざるを得なくなった。

ただ、肺のレントゲン撮ったら黒い影みたいなのが写ってて、癌とか結核とか肺炎とか疑われたけど次に撮ったら消えてたみたいでそのまま。

今はだいぶ収まったけど、風邪引いた時に喘息が出て、たまに酸欠で倒れてしまうようになった。

以上が、私の恐怖体験。