16/10/14
8年前、友人2人と泊まった中国地方の民宿の話。二階建ての木造で、海沿いにあったと思う。

そん時は1週間ばあちゃんの家に泊まってた。泊まりの3日目、海水浴に行ったんだけど、夕方になってひどい雨が降ってきた。

俺たちが遊んでた浜が、ばあちゃん家からかなり遠くて、俺らの原付じゃ帰るのは厳しいってんで、近所の民宿に泊まることになった。

で、民宿に着いたら、結構なトシの婆さんと中年のおっさんが出てきた。1泊したい旨を伝えると、快く部屋を準備してくれた。とりあえず飯食って風呂入って、疲れてたんでさっさと寝た。

深夜の2時くらいだった。


目が覚めたら友人のAがいなかった。手洗いにでも行ったのかと思ってしばらくぼーっとしてたが、20分しても帰ってこない。

不審に思ってBを起こして、Aを探しに行くことにした。十中八九廊下で寝ぼけて行き倒れてると思ったし。

二階から光が薄く漏れてるのに気づいた。階段をゆっくり上がって行くと、婆さんとおっさんの声がしていた。Aの声もした。

婆さんとおっさんはなんて言ってるのかわからなかった。Aの声は震えていた。

「わかりません」

「知りません」

「違います」

「助けて」

俺とBは顔を見合わせた。で、障子を開けた。婆さんとおっさんが、虚ろな顔でこっちを見てた。婆さんは包丁を持ってた。

Aは泣きながら走ってきた。婆さんとおっさんは生気がないって感じで、めちゃくちゃ怖かった。俺の方見てんのに、俺の後ろを見てるみたいな。

婆さんが何か言った。

その瞬間、後ろから引っ張られる感じがして、俺とBは階段から転げ落ちていた。いつのまにかAも転げ落ちていた。

階段の上には、婆さんとおっさんと、なんかすげえ細長くてぐにゃぐにゃの黒い影がいた。ナメクジを極限まで黒くしたみたいなやつ。やべえと思った。

雨は止んでたから、民宿に携帯もPSPも全部ほっぽったまんま原付に飛び乗って帰った。Aは足がガクガクで、何回か原付でこけそうになってた。

しばらく走ると、とりあえずポプラがあったから、原付を停めて駆け込んで、しばらく時間をつぶした。ばあちゃん家に帰り着いたのは夜が明けてからだった。

Aに、婆さんとおっさんに何を言われていたのか聞いたけど、

「うなずいちゃいけないってことしか覚えていない。あとめちゃくちゃおっさんの口と、押入れん中が臭かった。ニワトリさばいたときみたいな臭いだった」

としかわからなかった。

民宿は多分まだある。婆さんは生きてんのか死んでんのかわからない。