750: 1/4 2007/01/18(木) 20:15:41 ID:jI90xO0n0
【老犬】

お盆に帰省したとき、飼い犬が死んだ。けっこうな老犬だった。
この犬とおれははっきり言って仲が悪かった。おれが小学4年か5年のときだ。
散歩先の土手で一休みしていると、そいつおれの頭に飛びかかってきやがった。
最初は野球帽にじゃれついているのかと思ったが、脱いでも執拗に飛びかかってくる。
怖くなったおれはその日を境に散歩当番をさぼるようになった。
だっこもしてやらない。お手なんかもってのほか。隙を見せると飛びかかってきやがる。

引用元: https://hobby9.5ch.net/test/read.cgi/occult/1168419251/



751: 2/4 2007/01/18(木) 20:16:41 ID:jI90xO0n0
犬は集団内の序列を重んじる 動物だと知ったのは実家を離れてずいぶん経ったころだ。
おれは一番下っ端に見られていたのかもしれないな。
そいつは兄貴分のつもりでおれを締めてたのかも。それはそれで腹が立つが。
結局そいつとは仲直りすることもなく、先のお盆を迎えることになった。実家に帰ると、そいつは玄関に寝かされていた。おしめ姿が妙に笑えた。

752: 3/4 2007/01/18(木) 20:18:09 ID:jI90xO0n0
電話では聞かされていたけど、まさに余命幾許もないって感じだ。
腐ったような舌を投げ出して、薄目を開けてこっちを見上げてやがる。
おれは上がり框に座ると、つま先でそいつの前脚を小突いた。「おしめ替えてやろうか?」むっとしたんだろうな。そいつは目やにだらけの目を見開くと小さく唸った。
靴を脱ごうとしたときだ。死にぞこないとは思えない勢いで飛びかかってきやがった。
ふいを突かれたおれはただ身をすくませた。いやはや大した爺さまだよ。気がつくとそいつは下駄箱の方にすっとんで、苦しそうにのたうっていた。

753: 4/4 2007/01/18(木) 20:19:16 ID:jI90xO0n0
年寄りの冷や水ってやつか。が、どうも様子がおかしい。口になにか咥えているようだ。
ネズミ? いや違う。魚のようにも見えるが野菜のようにも思えた。なんだあれは!おびただしい血が流れ出した。次の瞬間、得体の知れないなにかは掻き消えてしまった。
そいつは息をぜーぜー切らしながらしばらくおれを見ていたが、そのまま息を引き取った。
血の跡は吐血ということにした。得体の知れないなにかのことは家族には伏せたままだ。
755: 1/9 2007/01/18(木) 21:22:52 ID:jI90xO0n0
【握りしめた写真】

数年前、某県にある山での話。
俺は当時食べ歩きを目的とした大学サークルに入っていて、
一月に一回くらいのペースで美味いって評判の店なんかを巡ってた。
普段行くところはだいたい県内だったけど、長期休暇なんかには泊まりで遠出とかもしてたわけだ。


756: 2/9 2007/01/18(木) 21:24:06 ID:jI90xO0n0
ある夏休みのこと。先輩の一人が
「なあ、俺の田舎に知る人ぞ知るって感じの所があるらしいんだけど、行ってみないか?」
と言い出した。
先輩の話では、なんでもある山奥に有機栽培をしている農家が集まって出来た村みたいなものがあって、その村では取れたての野菜を使って食事をさせてもらえたりするらしい。
で、先輩のお目当てはそこで売られている手作りのパン。
親戚がそこに行ったときのお土産としてもらったんだけど、物凄く美味しかったらしい。


758: 3/9 2007/01/18(木) 21:26:28 ID:jI90xO0n0
「たまにはそんなのもいいかも」
ってことで、休みに入ってすぐに皆でそこに向かった。
山奥とはいっても最寄の駅から2時間ほど歩けば着くらしい。
「腹が減ってた方が飯が美味いしな」
なんて言いながら、ハイキング気分で皆と歩き出した。
夏のじりじりとした暑さの中、蝉の声を聞きながら俺たちは山を登って行った。

760: 4/9 2007/01/18(木) 21:27:33 ID:jI90xO0n0
1時間程した頃、道の向こうに人影が見えた。
「村の人かな?」
「すいませーん、ちょっといいですかー?」
俺達が声をかけると、その人はにこにこしながらこっちに歩いてきた。
頭をつるつるに剃り上げたおじさんで、山仕事のためなのだろう。夏だというのに厚手の長袖を着ていた。
これも山仕事で鍛えられたのであろう筋肉のついた身体が、服の上からでも見て取れた。


761: 5/9 2007/01/18(木) 21:28:54 ID:jI90xO0n0
「俺達○○村に行きたいんですけど、こっちの方でいいんですよね?」
先輩がそう声をかけると、おじさんはにこにこしながらうなずいた。
日焼けして浅黒い肌に、鼻の頭が赤くなっている。
「よかったー。実は俺達、その村のパンを食べに・・・」
そこまで言った時だった。
そのおじさんは、いきなり自分の頭を拳で叩き割った。


763: 6/9 2007/01/18(木) 21:30:19 ID:jI90xO0n0
どろり、と流れ出る中身。その色が真っ黒だったのを、俺はなぜか冷静に観察していた。
他の奴らも何が起こったかよく認識できていないようで、皆そのまま立ち尽くしていた。
だが、そのおじさんが頭の破片を手に持ち、崩れた顔でにこにこしながらこちらに差し出してきた時に誰かがやっと悲鳴を上げた。
「ギャーーーーッ!!」
その声をきっかけに俺達は一斉に逃げ出した。
数メートル走ったところで振り返ると、後輩が一人まだあのおじさんの前に立ちすくんでいる。
おじさんは頭の破片をそいつの口元に近づけ・・・。
「馬鹿!逃げるぞ!」
俺は急いでそいつの所まで戻ると、手を引っ張って山道を駆け下りた。


764: 7/9 2007/01/18(木) 21:30:49 ID:jI90xO0n0
その後駅まで戻って話を聞いたんだが、その山では何の事件も起こってないし、幽霊が出る噂なんかもないという話だった。
逆に山菜採りかなにかで迷った人が近くの村や町で見つかるということが何件かあり、「あの山には神様がいる」「山の神様に助けられたんだ」なんて話があるくらいだとか。

俺達は釈然としなかったがその村に行く気も失せてしまったので、
駅前の食堂で飯を食べるとその地を後にした。


765: 8/9 2007/01/18(木) 21:32:35 ID:jI90xO0n0
帰りの電車で、あの時立ちすくんでいた後輩が突然話し出した。
「あの時、俺動けなかったんじゃないんですよ。カメラ持ってたんで、写真撮ってやろうと思って・・・。」
・・・なんとも肝っ玉の太い奴だ。
「多分ちゃんと撮れたと思うんで、帰ったら家ですぐ現像してみますね」
(こいつは写真が趣味で、家に簡単な暗室があった。)
そう言って別れたのだが、それが生きている彼を見た最後だった。

彼は暗室の中で死んでいたのを家族に発見された。
死因は心臓発作だったが、どうも例の写真を現像中だったらしい。
発見された死体は現像した写真を握り締めていたそうだ。
その写真だが、遺族が怖がるんで、俺が引き取ったんだけど・・・。

766: 9/9 2007/01/18(木) 21:33:40 ID:jI90xO0n0
・・写ってたよ。バッチリ。
自分の頭の破片差し出しながらにこにこしてるおじさんがさ。
正直燃やしてしまおうかとも思ったけど、なんだか処分してしまうのも怖くて未だに手元にある・・・。

769: 1/4 2007/01/18(木) 21:47:55 ID:jI90xO0n0
【あるはずのない隣の部屋】

俺、アパートの2階に住んでるんだけどさ、一ヶ月くらい前から隣の部屋に女が来てるんだ、夜中に。しかも俺がちょうど眠りに落ちそうになった時に、カンカンカンってヒールのような靴で音を鳴らしながら毎日のように階段を登ってくるんだ。

2週間くらいそれが続いて、隣のヤツが羨ましいの半分、眠たいのを邪魔されるのにムカつくの半分って感じだったんだけど、ちょっと変なことに気づいた。

寝ぼけてるのもあるだろうけど、隣から会話が聞こえてきた事が無い。
それも変だけど、もっと変なのは俺の部屋を通りすぎていくんだよ。
一番奥の角部屋の俺の部屋を。そこには部屋がないはずなんだ・・・。


770: 2/4 2007/01/18(木) 21:49:43 ID:jI90xO0n0
その異常に気づいてからも1週間くらいは、あるはずのない隣の部屋に足音は来ていた。
だけど、数日後から俺の部屋の前で止まるようになったんだ、足音が。
ドアの前をウロウロしてる。足音だけが俺の部屋の前を行ったり来たりしてる。そんなことが1週間くらい続いた。

毎晩怖かった、でも毎日疲れて帰ってたからいつのまにか寝てて、何事も無く朝が来る。直接害がないから我慢できたと思う。

でもこの間、その足音が俺の部屋に入って来たんだ!いつもの様に部屋の前をウロウロしてたんだけど、急にドアの前で足音が止まった。正直ビビッタ。
今まで立ち止まるなんて無かったから。どうなるんだ、って思ってたんだけど、しばらくそのまま動かないんだ。


771: 3/4 2007/01/18(木) 21:50:50 ID:jI90xO0n0
うわっ、なんかヤバイって思ったとき、体が動かなくなった!なんだこれっ!?
て思ってると、その足音が入って来たんだ!でもドアを開けてない!
鍵かけてるから入れるはずが無い!だけど人の気配が隣の部屋にするんだよ!!

扉一枚向こうで足音がするんだよ!!コツ・・・コツ・・・コツ・・・ってゆっくりと何かを探すように、ウロウロしてる。で、ずっとヤバイって思ってたらやっぱり扉の前で足音が止まった!もうダメだと思って目をつむった瞬間に声が聞こえた
「ここにもない・・・」って。その後俺は意識を失った。


772: 4/4 2007/01/18(木) 21:53:15 ID:jI90xO0n0
翌朝起きて、マジでヤバかったな・・・と思いながらも、夢かもしれない、きっと疲れてたからおかしな夢でも見たんだろうって思った。

だけど、水を飲みに行こうと扉を開けたとき、現実だったんだって解った・・・。
床には足跡が残ってたよ。無数の片足だけの足跡が。

782: 1/3 2007/01/18(木) 22:54:41 ID:jI90xO0n0
【古い体育館】

ある高校生の男女各4人が、一人の家に集まって怖い話をしていたそうです。
夜もふけてきた所で、肝試しに行くことになりました。
でも本当の目的はむしろ、男女ペアになって行くという事のほうが楽しみだったので、場所は安直に彼らの通う高校に行くことにしたそうです。
しかしこの高校は築100年近くたっていたので、行って見ると思ったより迫力があります。
早速男女ペアになって、一組づつ学校の周りを一周することになりました。

構内には入れなかったので、周りを一周するだけならせいぜいかかる時間は20分ほどです。
まず最初の1組が出発しました。皆でひやかしたりしながら、にぎやかに去っていきました。
しかし、20分たっても30分たっても戻ってきません。
2人っきりで何をしてるんだろうかとひやかしながら、2組目が出発しました。
しかし、やはり彼らも帰ってきません。

784: 2/3 2007/01/18(木) 22:55:26 ID:jI90xO0n0
3組目が出発することになりました。
このころにはさすがに深刻になってきていて、絶対周ったら戻ってくるし、他のやつらも見つけたら連れてくると約束して出発しました。
そしてこの3組目も戻ってきません。
一組目が出発して、既に時間は2時間以上立っていました。
とうとう女の子は泣き出しました。
残ったもう一人の男の子が、
「俺が行ってくる。もし30分たっても俺が戻ってこなかったら警察へいけ。絶対待つなよ。」
と言い残して駆け出しました。
そしてその子も戻ってきませんでした。

785: 3/3 2007/01/18(木) 23:00:05 ID:jI90xO0n0
残された女の子は泣きながら、それでも1時間待ったそうです。
そしてその足で、警察へと向かいました。
警察官が探しても見つかりません。
しかし夜もすっかり明けたころ、とうとう7人は見つかりました。
その高校にはグランドの端に、古くなった旧体育館があるそうです。
そこのトイレを開けると、7人全員が首をつっていたそうです。
女の子の証言から、自殺する理由がないと思われたのですが、結局他殺の痕跡はなく、受験生の集団ヒステリーとして片付けられたそうです。

787: 1/3 2007/01/18(木) 23:03:20 ID:jI90xO0n0
【縁側の窓】

子供のころ
近所にちょっと変わった女性がいた
1日中縁側に座りながら何かぶつぶつと
独り言を言っているのだ

学校の通り道にその人の家があったため
学校の行きと帰り、必ずその人を見かけた

あの日も、いつも通り学校の帰り道に
その人の家の前を通った
いつもなら通りすぎる所なのだが
その日に限って、その人の独り言が気になってしょうがなかった
誰かと会話しているような
そんな風に聞こえたのだ

788: 2/3 2007/01/18(木) 23:04:15 ID:jI90xO0n0
塀の上に手をかけ
少し頭を出して、縁側のほうを覗いてみた
やはり女性1人しかいなかった
気のせいかと思い、帰ろうと思ったその時
その女性が喋りだした

「もう暗くなってきたから、中に入りましょうか」

自分に言っているのかと思い、ドキッとしたが
向こうがこちらに気づいている様子は無い
俺はもう少し様子を見てみることにした
「こんなに汗かいて、お風呂に入らなくてはね。
 待っててね、今お風呂の準備してくるから」
何もない、誰もいないはずの空間に向かって話かける女性
手に持ったタオルで目の前にある何かを拭き
家の奥の方へと消えていった
たぶんお風呂の準備に行ったのだろう


789: 3/3 2007/01/18(木) 23:06:20 ID:jI90xO0n0
何かの病気なんだな、小さいながらもそう思った俺は
これ以上覗き見してるのはよくないと思い
その場を立ち去ろうとした、その時家の奥のほうから
女性の声がした

「お風呂の用意ができたわよ、いらっしゃい。
 あぁ、ちゃんと窓は閉めてくるのよ」

その声がした数秒後、縁側の窓が閉まった

818: 1/7 2007/01/19(金) 01:51:45 ID:7rU/KR1x0
【四つ爪の熊】

夫が狩り支度をしていると、まだ赤んぽうの息子が、裾にしがみ付いて鳴きじゃくる。
出掛けようとすると、また裾をつかんで鳴くので、妻に子守を頼んで狩りに出掛けた。
しかしまた泣き出したので嫌な予感を感じながらも、山へ向かった。

山に入ってみると、獲物はなかなか見つからず、帰ろうとしたところ熊の足跡を見つけた。
よく見ると、獰猛な熊だと言われる「四つ爪熊」の足跡であった。
狩りに連れてきた犬も、熊の匂いを嗅いで警戒体制に入っていた。
一瞬、明日二人の弟達と出直してこようと思ったが、まだ日が高いので、一人でやれると思い足跡を追いはじめた。

819: 2/7 2007/01/19(金) 01:52:27 ID:7rU/KR1x0
すると、四つ爪の熊は木に隠れ待ち伏せしたような後があった。
それを見て、やはり明日出直そうと何度も思ったが、勇気をふるい一歩一歩慎重に進む。
日が落ち辺りがやや暗くなり始めたので、今日はここまでにしようと思った次の瞬間!
眼前のくぼみから黒い塊が突進してきた。数歩前を行っていた犬を飛び越えるように一気に男に襲いかかってきた!

男は持ってきた槍を構える暇もなく、組み伏せられたのだ。
このような場合のためにアイヌは、左腰にタシロ(山刀)、右腰にはマキリ(小刀)を下げ、どちらかあいている手で刃物を抜き敵を攻撃するのだ。
しかし獰猛な熊はその隙を与えず、猫がネズミを捕まえて直ぐに殺さず、弄ぶように、
男を投げたり転がしたり、また投げては受けを繰り返します。
男は神々に助けを求めながらタシロで応戦したが、思うようにいかず、やがて男は気が遠くなり、死んだのか眠ったのかわからなくなった。

820: 3/7 2007/01/19(金) 01:54:00 ID:7rU/KR1x0
妻はなかなか帰って来ない夫を心配して待っていると、外はすっかり暗くなり、帰ってきたかと外へ出てみれば、一緒に行った犬の他、夫の姿は見えず。
家の中に飛び込んできた犬の様子を見ると、白い毛が血で真っ赤に染まり、夫の着物の片袖をくわえているではないか。

それを見てすぐに山で何かあったか解った妻は、急を知らせる叫び声を上げるとコタン(村)の人達はあっという間に妻のもとに集まってきた。
話を聞いたコタンの人達は「すぐに山にいこう」と言うが、弟達は「今夜は身内の物だけで行く、明朝、私どもを探しに来てください。」と断った。

821: 4/7 2007/01/19(金) 01:55:30 ID:7rU/KR1x0
妻は子供を本妻に預け、(旦那と本妻の間には子供が出来なかったので、妾を貰っていて、子は妾との子なんです。)夫の弟達と三人で山へ上った。
妻はカヤの束に火を着け、弟達は槍を構え進んで行くと、犬が小声で鼻を鳴らしだした。
明かりを掲げて辺りを見回すと、薄く積もった雪の上が血で染まっていた。それが熊の物か夫の物かは判らない。
だが、木の枝にぶら下がった人間の腸を見て夫が殺されたことを悟った。

822: 5/7 2007/01/19(金) 01:56:19 ID:7rU/KR1x0
二人の弟は槍を構え慎重に、妻は明かりを絶やさない様次々とカヤの束を燃やしながら進んだ。
しばらく行くと草むらから、「パリッ、パリッ・・・」と熊が何か食べている音、骨を噛み砕いている音が聞こえる。
妻は恐怖した。しかし夫の仇に負けるかと思いいっそう明かりを強くし弟達の足元を照らす。
上の弟が草むらに近づき「化け物熊よ出てこい!兄の仇を打ちに来たぞ!!」と怒鳴ると、食べる音がぴたりと止んだ。
四つ爪熊は立ち上がり、二足歩行で向かってきた!
その化け物熊の迫力に圧倒された下の弟は、5、6歩後ずさりしたが、ハッと向き直り、熊を目掛けて突進する。

823: 6/7 2007/01/19(金) 01:57:32 ID:7rU/KR1x0
上の弟は大きく開かれた口へ、下の弟は心臓目掛けて一気に突き刺すと、大きな熊はどっと倒れた。
何度も槍で突き刺し完全に息の根を止めると、辺りを探してみたが、
やはり夫の姿はなく着物の切れ端や骨の一部が散らばってるばかり。

825: 7/7 2007/01/19(金) 01:59:16 ID:7rU/KR1x0
三人は泣きながらそれらを集めると三分の一程しかなかったという。
妻はあの朝、子供が父の身を案じ必死に引き留めていたのにそれに気付かなかった事を悔やんだのだった。

941: 1/4 2007/01/19(金) 11:01:32 ID:oZKI+h090
【花魁(おいらん)の絵】

友人Mが大学生だったころのお話です。
名古屋の大学に合格したMは、一人住まいをしようと市内で下宿を探していました。
ところが、条件がよい物件はことごとく契約済みで、大学よりかなり離れたところにようやく一件見つけることができました。

とても古い木造アパートで、台所やトイレなどすべて共同なのですが、家賃がとても安いため、Mは二つ返事で契約を交わしました。
引っ越しを済ませ、タ際住み始めてみるととても静かで、なかなか居心地のよい部屋での生活に、Mは次第に満足するようになったそうです。

そんなある晩のこと、Mの部屋に彼女が遊びに来ました。
2人で楽しくお酒を飲んでいると、急に彼女が「帰る」と言い出しました。
部屋を出ると、彼女は「気を悪くしないで聞いてほしいんだけど、この部屋、なにか気味が悪いわ」とMに告げました。
彼女によると、お酒を飲んでいる間、部屋の中に嫌な気配が漂っているのをずっと感じていて、一向に酔うことができなかったというのです。

942: 2/4 2007/01/19(金) 11:01:50 ID:oZKI+h090
「気を付けたほうがいいよ」という心配そうな彼女の言葉をMは一笑に付しました。
もともとその手の話を全く信用しないMは「そっちこそ気を付けて帰れよ」と、彼女を見送ってあげたそうです。
しかし、結果的にこのときの彼女の言葉は取り越し苦労でも何でもなく、その部屋はやはりおかしかったのです。
このころから、Mは体にとてつもない疲れを覚えるようになりました。
別段アルバイトがきついというわけでもないのに、部屋に帰ると立ち上がれないぐらいに力が抜けてしまいます。

また、夜中寝ている間に、誰かが首を絞めているような感覚に襲われ、突然飛び起きたりしたこともありました。
そのせいでMは食欲も翌ソ、げっそりと痩せてしまいました。
きっと病気だろうと医者に診てもらいましたが、原因は分からずじまいでした。
心配した彼女は、「やはりあの部屋に原因がある」とMに引っ越しを勧めましたが、あいにくそのような費用もなく、
Mは取り合おうともしませんでした。

943: 3/4 2007/01/19(金) 11:03:16 ID:oZKI+h090
そして、そのまま2週間ほど経ったある晩のことです。
その日、Mはバイトで大失敗をしてしまい、いつにも増してぐったりとしながら夜遅く部屋に帰り、そのまま眠ってしまいました。
真夜中、ものすごい圧迫感を感じて急に目を覚ましましたが、体は金縛りのため身動き一つとれません。

ふと頭上の押入れの襖(ふすま)に目をやりました。
すると、閉まっている襖がひとりでにするする…と数センチほど開いたかと思うと、その瞬間、ぬーっと真っ白い手がMの方へ伸びてきたそうです。
Mは心の中で≪助けて…≫と叫ぶと、その手はするするとまた隙間へと戻っていきました。
しかし、ほっとしたのもつかの間、今度は襖の隙間から真っ白い女の人の顔が、Mをじっと見つめているのを見てしまったそうです。

Mは一睡もできないまま、朝を迎えました。やがて体が動くようになり、Mは部屋を飛び出しました。
そして、彼女をアパート近くのファミレスに呼び出し、「どうしようか」と2人で途方に暮れていたそうです。

ちょうどそのとき、少し離れた席に一人のお坊さんが座っていました。
そのお坊さんは、先ほどより2人のことをじっと見ていたのですが、いきなり近づいてきたかと思うと、
Mに向かって、「あんた、そんなものどこで拾ってきた!」と一喝したそうです。
Mが驚きながらも尋ねると、Mの背中に強い念が憑いており、このままでは大変なことになると言うのです。


944: 4/4 2007/01/19(金) 11:04:22 ID:oZKI+h090
Mは、今までの出来事をすべて話しました。
するとお坊さんは、自分をすぐにその部屋に連れて行くようにと言ったそうです。
部屋に入ると、お坊さんはすぐに押入れの前に立ち止まり、しばらくの間、その前から動こうとしません。

そして突然印を切るといきなり襖を外し始め、その一枚を裏返して2人の方へ向けました。
その瞬間、Mは腰を抜かしそうになったと言います。
そこには、なんとも色鮮やかな花魁(おいらん)の絵が描かれていました。
舞を舞っているその姿は、まるで生きているようで、心なしかMの方をじっと見つめているように感じたそうです。

お坊さんによれば、「どんないきさつがあったかは私には分からないが、この絵にはとても強い怨念が込められていて、
君の生気を吸って次第に実体化しつつあり、もう少しで本当に取り殺されるところだった…」と告げたそうです。

お坊さんは、襖の花魁の絵の周りに結界を張ると、「すぐ家主に了解を得て、明日自分の寺にこの襖絵を持ってきなさい」と言い残し、立ち去りました。
次の日、彼女とともにお寺に赴きました。そして、その襖絵は護摩とともに焼かれ、供養されたということです。

953: 老婆1/2 2007/01/19(金) 11:48:55 ID:oZKI+h090
【老婆】

朝練のために、朝早く登校した私の友達が、運悪く、
学校の側の川(といってもほとんど用水路くらいの川幅しかないところですが)
で自殺したおばあさんを見つけてしまったのです。
その日はもちろん大騒ぎになり、友達も警察で事情聴取を受けました。
後から聞いた話では、そのおばあさんは長らく病気を患っており、それを苦にしての自殺だったらしいのですが、
当時の私たちにはそのような汚いヘドロだらけの川で自殺するということが信じられず、
あれは他殺に違いないと、いろいろ想像を巡らしては騒いでおりました。

954: 老婆2/2 2007/01/19(金) 11:49:06 ID:oZKI+h090
当時流行っていたコックリさんに、自殺した方のことを聞いたりする子もいました。
そのメンバーには私も入っていたのですが。それから10日も経たないある夜のこと。
二段ベッドの上で寝ていた私は、夏でもないのにひどく寝苦しく感じて目を覚ましました。
するとそこには、天井いっぱいに広がる老婆の顔が……その顔は怒りに満ち溢れていました。
同時に金縛りにあい、私は声を出すことすらできませんでした。
目を閉じても、気配は続いてました。
私はひたすら心の中で「ごめんなさい」と繰り返しました。
気が付くと、いつの間にか朝でした。眠ったのか気を失ったのか、記憶は定かではありません。
あれが亡くなった方からの警告だったのか、コックリさんの悪戯かはわかりませんが、
その日から私がその話題に近づくことはありませんでした。